……そんなことを思い返しながら、

僕は花とバケツを抱えて、坂道を登る。


丘の上に作られたこの霊園までは、徒歩で来れば冬場でも汗ばむくらい、ちょっとした運動になる。



僕は息を切らしつつ、ようやく彼女のお墓にたどり着いた。


墓石や周辺を掃除して、花を添え、線香をあげた。


義広の言った通り、空からはパラパラと粉雪が降っていた。



こうしているとたまに、お墓に向かって話しかけている人に出会うけれど、

僕はそういうことはしない。


彼女の骨は、確かにここにある。

けれど彼女の想いは、ここには眠っていないから。



僕はお参りをすませ、再びバケツを持って立ち上がる。



坂の方から、人影が近づいてくるのが見えた。

その人は僕に気づくと足を止め、遠くから僕を呼んだ。


「久しぶりだな、拓人」


「叔父さん……戻って来てたんですか」