「家族って何なんだろうね」
帰る道すがら、桜子が言った。
「さあなー。難しいな」
「けど大切なものだよね」
僕はふと、以前聞いた言葉を思い出す。
「……家族には二通りあるんだよ」
「二通り?」
「血のつながりが作る家族、そして恋が育む家族」
「誰かが言ってたの?」
「うん。未来のブラックジャックがね」
「何それ」
桜子はプッと吹き出して、僕の腕に抱きついた。
「それじゃ無免許医師じゃない」
「あ、そっか」
桜子がおかしそうに笑うから、僕もつられて笑う。
こんなシンプルな幸せを、ずっと求めていたんだ……。
僕は晴れ渡った空を見上げて、
ありがとう、と小さくつぶやいた。