「でも、2年後にふたりは再会してしまったのよね。
しかもリナに赤ちゃんができた。

……桜子さん、あなたがね」


桜子はしっかりとした表情でうなずき、秋山さんの視線を受け止める。


秋山さんは続けた。


「その頃、リナはまだ浩二と付き合っていたの。
浩二は“どっちの子供か分からないから、すぐに堕ろせ”って言ったわ。
けど、リナは産んだ。浩二ではなく、あの人の子供として」


「え……、でも」


それならば結局、桜子の父親はどちらなのか分からずじまいじゃないか?


そんな疑問を口にしようとしたとき、

秋山さんは突然、ため息に似た笑いをもらした。


「けどね、臨月に入ったある日、信じられない言葉をリナから聞いたの」

「え?」

「リナと大塚さん、肉体関係はなかったのよ」


思いがけない告白に、僕と桜子は言葉を失う。


それって……どういうこと?

頭がついていかない。


「彼らなりのケジメだったんでしょうね。
それぞれ家庭を持っていたり、恋人がいる立場だったから、最後の一線は越えなかったというわけ」


「……だったら父はどうして認知したんですか?
しかも叔父には、桜子が自分の子かもしれないと嘘をついて……」