「自宅でめまいを起こして倒れたようです。
けどこの病院に運ぶよう自分で頼んだらしいですから、
意識はハッキリしてたんでしょうね」


医師と思われるその男が、穏やかな口調で言う。


そのとなりで義広は、両手を合わせて申し訳なさそうな顔をした。


「拓人、すまん!
たいしたことないのに、焦って電話かけちまった……」


僕はおそるおそる、桜子の顔を覗きこむ。


血色の戻った頬。

たしかな寝息。


……とたんに体中が脱力した。


安堵感が僕の両足からを力を奪い、へなへなと倒れそうになったところを、医師に腕をつかまれた。


「大丈夫ですか?座ったほうがいい」


そう言って彼はベッド脇の椅子を僕にすすめた。


支えてもらいながら椅子まで移動し、

お尻をついたとたん、本当に力が抜けきっていくのがわかった。