受付のスタッフが
「マユミちゃん、指名ね」
と声をかけた。
マユミはだるそうに首を回しながら、仕事道具を持って出て行った。
何も言い返せなかった。
そっと胸に手を当ててみたら、いつの間にかその内側が壊れていたことに、僕は気づいた。
痛みすら、もう感じない。
ただ逃げ出してしまいたいと、心が叫んでいる。
しばらくすると店の電話が鳴った。
いつもならスタッフに任せているのに、虫の知らせだろうか……
この時は僕がとっさに受話器を取った。
「はい――」
「拓人?!」
切羽詰った義広の声。
僕が返事をするより先に、彼は言った。
「今すぐ……今すぐうちの病院に来てくれ!」
壊れた心が、
ざわざわと騒ぎ出す。