周辺に有名店がひしめくこの池袋では、
うちのような小型店舗は見向きもされない。


加えて、人気コンパニオンが辞めてしまったことで客足が減り、

そうなると稼げないということでさらにコンパニオンが辞めてゆく

という悪循環を生んでいた。


一番困るのは、店長以上の役職につくと給料が月給制ではないということだ。


自分の担当する店の売り上げが、そのまま自分の生活に響く。


今月末に僕が受け取ることのできる給料は、はたして幾らあるのやら。



「で、今日で何日目でしたっけ?」


コンパニオンの待機室に置かれたソファを見ながら、コバが訊いた。


それは安っぽい合皮の三人掛けソファで、
最近はもっぱら僕のベッド代わりとして活躍しているものだ。


東京の高い家賃をとてもじゃないが払えない僕は、

いまだ部屋を借りられずに店のソファで寝泊りしていた。


「たぶん、今日で3週目に突入かな。
早くきちんとした布団で寝られる生活を取り戻したいよ」


無理な寝姿勢のせいで痛む肩をおさえ、

僕は自嘲気味に笑った。