「ここがね、ピクンってしたんだ」

「……気のせいじゃない?」

「違うよ」

「そうだって」

「ううん、絶対――」

「しつこいなッ!」

「……っ」


桜子の顔がみるみる青ざめ強張った。


周囲はしんと静まり返り、訝しげな視線を僕らに向ける。


意識と関係なしに飛び出した僕の言葉に、おそらく僕自身が一番動揺していた。


「ごめん」


それだけ言い残し、いたたまれずに逃げ出した。


様子を見ていた人たちが気まずそうに、さっと道を開けた。