「この本どう?“幸せを呼ぶあかちゃんの名前”だって」
赤ちゃんのイラストの表紙を僕に見せて、無邪気にはしゃぐ桜子。
「ああ……いいんじゃない?」
「だよね!」
桜子は嬉しそうに笑って、自分のお腹に話しかける。
「赤ちゃーん、聞こえてますか?
ちゃんとママが可愛いお名前を考えてあげるからねー」
そして顔をパッと輝かせて言った。
「動いた!」
「え?」
「今、赤ちゃんが返事してくれたよ!」
「まさか。胎動はまだ早いだろ?」
「けど動いたんだもん!」
桜子は強い瞳で主張して、僕の手を取ると自分のお腹に当てがった。