「拓人」


名前を呼ぶ声に、ビクンと体が固まった。


「どうしたの?まだ店内にいたんだ」

「……」

「何かいい本でもあった?」

「いや、別に」


桜子が近づいてこようとしたのを止めて、僕はその場から立ち去った。



いったい、何をしようとしていたんだ?

自分の行動を思い出して、大きく息を吐く。


信じるって……決めたのに。

任せとけって、叔父にそう言われたのに。


真実が明らかになるその日までは、よけいなことを考えず桜子を守ろうと決めたのに、

僕はさっき何をしようとしたんだ……?



「ねえ拓人、見て見て」


パタパタと桜子が後ろから追いかけてきた。