『生物学・遺伝学』
そう記された、そっけない印刷の文字。
体が固まり、周囲の音が消える。
ふらり、と次の瞬間に足が動いたと思ったら、
無意識にその棚の方へと歩み寄っていた。
窮屈そうに詰めこまれた本。
目がチカチカしそうなほどに並んだ、無数のタイトル。
『人類の進化』
『ライフサイエンス』
僕の瞳がせわしなく動きだす。
やめろ、と頭のどこかで声がする。
『細胞』
『免疫の仕組み』
いったい何を探している?
やめておけ。
ダメだ。
なのに止まらない。
そのタイトルの文字を、僕の目は確かにとらえてしまった。
『近親…』
鼓動が速まる。
汗がにじみ出る。
右手が、勝手に伸びる。
やめろ――