本屋に来るとなぜか落ち着かない性分の僕は、すでにうんざり気味だ。
桜子は瞳を輝かせて、名づけ本の棚を物色している。
ショッピングセンターに行きたいと言うから連れてきたけれど、
まさか本屋に付き合わされるだなんて予想外だった。
独特のインクの匂いとか、迫ってくるような背の高い本棚とか、
とにかく本屋というやつが僕は大の苦手だ。
「ダメだ、俺ちょっと外に出るわ。タバコ吸ってくる」
「え?ちょっと拓人」
非難の声を背中に浴びながら、そそくさとその場を去る。
週末の本屋は混雑していて、何度も人とぶつかりかけた。
午後から漫画家のサイン会とやらがあるらしく、よけいに人で賑わっていた。
そんな中をまっすぐと、僕は出口の方へ向う。
そして外に出て、タバコを吸うはずだった。
なのに――
視界の端に映ったひとつの棚が、僕の足を止めてしまった。