「明菜本人からリークがあったんだよ。
今日お前の家から女が出てくるところを、偶然見たらしくてな。
すごい剣幕で俺のとこ来て、洗いざらい話してくれた」
「……」
「なあ成瀬。遊ぶならもっとうまくやれよ。
女の嫉妬は恐ろしいぞ?」
黙ったままの僕にオーナーが言う。
バカな男への戒めと、
からかいが混ざったような、
嫌な声で。
「……明菜さんは」
「ん?」
「明菜さんは、自分から暴露して、今後どうするつもりなんですか?」
ふんっ、とオーナーが鼻で笑う。
「あいつは今日で辞めたよ。
あれだけの指名客を持ってりゃ、他店からの引き抜きも相当あったしな」
「……」
「けど最終的な引き金になったのは、成瀬、お前だ」
「待ってください!」
とっさに出た声は、自分で驚くほどに張り詰めたものだった。
「僕はこの仕事にやりがいを感じているし、まだやめたくありません。
社長の下で働かせてください」
「俺の下で?」
「はい。今まで以上に頑張りますから」
「……なるほど」
オーナーがヒゲをいじりながら、何かを考え込む素振りをする。
次の言葉が発せられるまで、
僕は唾を飲むのも忘れて様子をうかがった。