「は?」
何の前ぶれもなく社長の雪村に呼び出され、
これまた何の前ぶれもなく告げられた言葉に、
僕は耳を疑った。
「だから、クビって言ったんだよ。お前はクビ」
オーナーは表情も変えず、まるで葉巻の煙を吐き出すついでのように、そう言い放った。
「ちょっと待ってください……どうして」
「そりゃお前、商品に手つけちゃダメだろ」
「え……」
僕の脳裏に、ラベンダー色のワンピースが浮かぶ。
まさか。
昨日の今日でバレたのか?
「しかも、よりによってナンバーワンに手出しやがって」
「え?ナンバーワン……?」
「明菜だよ。何度かふたりで会ってるだろ」
「あ――」
そっちか。
コンパニオンの中で、不動の指名ナンバーワンを誇る明菜。
昨夜のえみりと同じように、酒の流れで僕の部屋に来たことが数回あった。
だけどそのときは全くバレる気配がなかったし、
どうして今さら?