「ウサギっていうより、拓人はキツネだよね。目が細くって。ほら、こんな風に」


そう言って彼女は、自分の目尻を指でクイッと引き伸ばす。


その奇妙な表情にひとしきり笑ったあと、

彼女はふいに真剣な瞳になって、僕を見た。


「ねえ。私、思うんだけど」

「ん?」

「占い師のおばさんの言葉。
それってつまり、拓人が恋に生きる男だって言いたかったんじゃないかな」


僕は笑う。


彼女は時々こういった不可解な言葉を、
ふわふわと無責任に放つ癖があったのだ。

それも、かなり唐突に。


「きっとそうだよ」

「どうして」


だって考えてみて?
と彼女はさらに僕を見つめた。


「体を壊すくらいお酒を飲むのは、誰かを想うから。
寂しさに凍えるのも、誰かを想うから。
そうでしょ?」

「そうとも限らないと思うけど」

「ううん。きっと拓人は生きている限り恋をするんだよ。
だから、恋して死ぬの」



……そうかなあ?


「そうだよ」



……生きている限り?



「うん。きっと」




きっと、そうよ―――…