たっぷり2時間ほど楽しんだと思う。
連発によるフィナーレを終えたとき、僕も桜子もすっかり放心状態だった。
まわりの人々も一様に、興奮の冷めきらない顔をしている。
駅へと向かう彼らとは逆の方向に、僕は桜子の手を引いて歩いた。
「……どこに向かってるの?」
桜子の声が、ななめ後ろから聞こえた。
「さあ」
「何それ」
「なんとなく、夜の散歩とかしたいなあ、なんて」
そう答えると、彼女も同じ気持ちだったのか、何も言わずに身を寄せてきた。
僕たちは川辺をあてもなく歩いた。
花火の余韻のせいだろうか、体も頭もふわふわしている。
雑踏は遠ざかり、砂利道を踏みしめる音だけが、闇に溶けてゆく。
「素敵な夏の思い出ができたな」
「うん」
「またデートしような。色んな所に行って、色んなことしてさ」
「うん……」