縁日の屋台が並び、橙色のちょうちんの灯りが、どこまでも続いている。


「すごい熱気ね」


高揚感に頬を染めて、桜子が言った。

僕のテンションも自然と上がる。



花火開始の時刻が迫っていた。


太陽はすっかり隠れ、これから始まる彩りのショーのために、空は真っ黒のキャンバスに変わった。


そして、

堤防のそばのわずかなスペースに腰を下ろそうとした、その時。


ひゅるるる……と
細い音が頭上から届いた。


「わあっ」


歓声がおこる。


僕らはあわてて空を向いた。

幕開けを祝うように、花火が5発連続であがった。


ドン!という重低音が空に響き、心臓を打つ。

同じ方向を見上げる人々の顔が、赤い光に照らされている。


「きれい……」


かき消されそうな小声で、桜子がつぶやいた。


それから花火はとめどなく打ち上げられた。

大輪の花が空に広がるたび、人々は感嘆の声をあげた。