あれから、叔父とは会っていない。
なぜかあまり深入りしない方がいいような気がしていた。
あの一件を心のどこかに残しつつ、普段と同じ生活の中に僕はいた。
蝉の鳴き声にもすっかり耳慣れた8月。
世の学生たちは浮かれているけど、僕らにはあまり関係ない。
社会人になると、夏休みもへったくれもないのだ。
「そんなことないよ。大いに関係あるよ」
桜子が言った。
僕は食卓に食器を並べながらたずねる。
「なんで?」
「夏休みの学生アルバイトが何人か入ってきたの」
「うん」
「つまり、シフトの融通がきくのよ。普段は休みをもらいにくい週末も、今なら大丈夫」
ああ、なるほどね。