「失礼ねー、叔父さん。私だって彼氏くらいできるもん」

「じゃあ男ができたら俺に紹介しろよ」

「絶対やだ。叔父さんって、変なことしゃべりそうだもん」

「大丈夫だって」


大仰な口ぶりで叔父は言った。


「お前が昔、炊飯器に水を入れずに米炊いたとか、言わないから」


眉間をぴくぴくさせ、叔父をにらむ桜子。


家事全般をそつなくこなす今の彼女からは、とても考えられない失敗談だ。


僕は昔の桜子を垣間見れた気がして、なんだか嬉しくなってしまう。









一時間ほど話し込んだあと、叔父の家を出た。


うだるほどの暑さの中、駅までのわずかな距離を、日陰を選んで僕らは歩いた。


道路は夏の陽光でさんざん温められ、せりあがるような熱を放っていた。


「可愛かったねー、スミレちゃん」

「叔父さん、デレデレだったよな」

「ほんと。孫は目に入れても痛くないくらい可愛いって、ああいう状態をいうんだろうね」


桜子がクスクスと笑いながら言う。