コバが去ると、僕は大きな深呼吸をした。
そして、ミドリのことを少しだけ考えた。
どうか――
彼女の未来が喜びに満ちたものでありますように。
哀しい瞳をした、
どこか僕に似ていたあの人が、
これからの日々を自分らしく生きられますように。
翌日、僕と桜子は連れだって叔父の家を訪れた。
その目的は、昨日の法事とは打って変わった明るいものだ。
「スミレちゃ~ん。お腹すいてないかな~?」
今まで聞いたこともないような、猫なで声をあげる叔父さん。
彼が愛しそうに覗きこんだベビーベッドには、
かわいい女の子の赤ちゃんが真ん丸の体を投げ出している。
「もうー、お父さんったら!桜子ちゃんたちがあきれてるよ」
新米ママの舞さんが、たしなめるように言った。