桜子だけ残し、僕らは家を出た。
なんとなくしばらく歩いて、近所のタバコ屋の前で足を止めた。
コバは財布から小銭を出して、ゆっくりと自販機に入れてゆく。
そして、マイルドセブンのボタンを押して言った。
「ミドリのことですよね?」
コトン、と乾いた音を立ててタバコが出てくる。
「……勘いいじゃん」
「店長って、案外わかりやすいっすから」
「悪かったな」
コバはタバコを一本取り出すと、それを僕に差し出した。
ついでにライターも貸してもらい、火をつける。
ふたり分の息遣いだけが、しばらく続いた。
「別れたみたいですよ」
「え?」
コバはゆっくり煙を吐きながら言った。
「けっきょく、ミドリはいいように使われて、捨てられちゃったみたいです。
そこからは連絡とってないから、俺も何とも言えないっすけど……」
「……」