「んじゃ、お邪魔しました」


玄関で靴ヒモを結びながら、コバが言った。


「もっとゆっくりしていけばいいのに」

「いやいや、ふたりの邪魔しちゃ悪いんで」


そう言って扉に手をかけるコバ。

からかうような口調は、彼なりの気遣いだろう。



「あっ、コバ!」


外に踏み出したところを、僕はとっさに呼び止めた。


「――はい?」

「あ……あのさ」

「……?」


口ごもる僕を見て、コバも桜子も不思議そうにしている。


けれど彼は、すぐに察してくれた。


「桜子ちゃん。ちょっと店長借りるね」

「え?うん」