「で、コバくんは最近どうなの?」

桜子が言った。


そのとたん、コバの顔が火を噴く勢いで赤くなる。


「えっ、お、俺?!」

「ああ~、その顔はさては、なんかあったな?」

「いや、別に何もないっすよ!」


むきになって否定するコバ。


「いいじゃん、素直に話せよー」

「あっ、ちょ……、何するんすか店長!」


坊主頭をグリグリいじってからかうと、
コバは観念したのか、ついに口を割った。


「……俺、新しく働いた店で、好きな女ができたんです」


背中を丸め、子供のようなたどたどしさでコバは話しだす。

今まで見てきた彼とは、まるで別人のようだ。


「彼女、女手ひとつで3人の子供を育てて。
そのために風俗で働き出したらしいんすけど。
……なんか俺、彼女のことすっげー応援してあげたくなって」


自分でも不思議だけど、とコバは赤い顔で言った。


「むこうはコバをどう思ってるわけ?」

「いや、彼女は俺の気持ちすら知らないです」

「じゃあ今はスタッフの立場から、彼女を応援してるわけだ?」


僕の言葉にコバは首を振った。


「俺、風俗のスタッフやめたんです」

「え?!」

「今は工事現場で穴ほってます」


コバの焼けた顔から、真っ白い歯がちらりと見えた。