最悪だ……。
本当に最悪。
三流ドラマみたいに、全身あざだらけでガードレールにもたれかかりながら、そう思った。
口の中が切れて痛い、だなんて何年ぶりだろう。
僕をこんな姿にした3人組は、捨て台詞を残して去っていった。
取り囲んでいたギャラリーも、少しずつ散った。
地面が濡れているせいで、お尻がひどく冷たい。
雨が前髪をつたって視界を邪魔する。
わずかに残ったギャラリーの、色とりどりの傘がまぶしかった。
目を細めてそれを眺めていたら、見覚えのある顔に気づいた。
「あ――」
僕と目が合ったことを知ると、
その人物はくるりと身をひるがえし、
そして次の瞬間走り出した。
「ちょっと……!待てよっ!」
僕は体の痛みすら忘れて、とっさにその背中を追いかけた。
バシャン、バシャン、と濡れた地面を蹴る音。
あがった息が肺を締め付ける。
背中はビルの一角を曲がり、路地裏に吸い込まれた。
僕もあとを追う。
少しずつ距離がつまっていく。
僕の手が伸びる。
「――待てよっ!」
手ごたえがあった。
濡れたTシャツの感触を覚えた。
つかんだ肩を引き寄せて、その体を振り向かせた。