営業時間が終わろうとしている頃だった。


「きゃあ――!」


悲鳴が聞こえて飛び上がった。


待機室で世間話に花を咲かせていたコンパニオンたちも、
怪訝そうに顔を見合わせる。


「……桜子?」


これまで聞いたことないような叫号の声だったのに、
どうして彼女だとすぐにわかったのか。


そして、
わかったと同時に走り出していた。




「桜子ッ!」


それほど広くない店の、一番奥のプレイルーム。


指名客と桜子が10分前に入っていった扉を、

何の迷いもなく僕は開けた。


「――拓人……っ」


僕の名前を呼ぶ声に、一瞬安心して

――次の瞬間、息が止まりそうになった。


彼女の小さな体の上に、客が被さっていた。


それは明らかに
プレイの範囲を超えようとしている姿。


脳が理解していくにつれ、

ふつふつと怒りが湧き起こる。


桜子と目が合った。


瞳いっぱいに溜めた涙は、今あった出来事の恐怖というより、

僕に見られてしまったことへの絶望に見えた。