また朝が来る。


寝返りすらうてないソファでは、
眠りはつねに浅いところを漂っている。


昼過ぎまで天井だけ見て過ごして、

夕方頃やっと起き上がった。


ひとり、ふたり、出勤してくる。

しだいに待機室がにぎやかになる。


認めたくないその人の姿を、
僕の目は捉えて――


また始まってしまうのだ。

今日がまた、始まってしまう。



「……おはよう、拓人」


ずっと口をきこうとしない僕に、

それでも懲りずに声をかけてくる彼女……。


大切だったのに。

僕のたったひとりの家族だったのに。


「拓人……、顔色悪いよ?
やっぱりちゃんと家に帰ってきたほうが……」


こんな世界で、君を見たくなかったのに。

あの家ですごす日々が、幸せだったのに。


「拓人――……」


もう、君のことが、何もわからない。