「だったら店長、ちゃんと彼女のフォローしてあげたら?
……桜子ちゃん、店の中で孤立してるでしょ」


その通りだった。


コンパニオンたちは桜子のことを、あまりよく思っていないのか、
いっこうに打ち解けていく気配がない。


「そういえば彼女、よくない噂が流れてるよ」


僕はそれまで天井を見ていた視線を、
「え?」とマユミのほうに向け、言葉の続きを待った。




「本番させてるって噂」



僕は声をあげて笑った。


何だって?

本番?

誰が?


そんなバカな話があるわけないじゃないか。

傑作だ。

そんな、根も葉もない噂――


「――そんなこと、あるはずないだろッ!」


笑い飛ばしていたつもりが、
気づけば壁を殴りつけていた。


「店長……」


沈黙。
僕の荒い息だけが断続的に響いた。


「桜子がそんなことするはず……」


ないと、
嘘だと、

誰か言ってくれ――……