まったく、
今日はおかしな日だ。



「じゃあ、俺たちの出会いを祝して、乾杯!」


狭苦しいカウンターの一番奥の席で、
僕は見知らぬ男とグラスを重ねた。


ぐびぐびと喉を鳴らしながら、男はビールをうまそうに飲み干す。


「ん?どうした?あんたも飲めよ」


そう促がされて、僕は麒麟ビールのもよう入りのグラスを、渋々口元に運んだ。


けっして社交的な方とは言えない僕が、
こうして初対面の男とふたりで酒を飲んでいるなんて、

まったくおかしな状況だ。


そういえば今日は、
最初から

おかしな
一日だったっけ――






ミドリが突然店を訪れたのは、

開店直後の、
まだまだ太陽が沈みきらない時間帯だった。


鏡の前でネクタイを結びなおしていた僕の肩を、
彼女は後ろからポンと親しげに叩いた。


「こんにちは、店長さん」

「ミドリ?!」