ミドリが使ったあとの乱れたベッドに、桜子が座っていた。


「ごめんな」

「何が?」

「コバのやつ、ほんと騒がしいだろ?疲れたんじゃない?」

「ああ、そのこと」


大丈夫、と言って、
桜子はさっきと同じようににっこり笑った。


僕が桜子の横に座ると、重みでマットが沈み、
彼女の体がわずかに上下した。


「桜子……さっきさあ、なんで親戚だって答えたの?
君ならあっけらかんと、兄妹ですって言うと思った」


「ああ」


桜子は伏し目がちに笑ってうなずいた。


彼女のつま先がぶらぶら揺れている。
いつかも見た仕草だ。


「拓人が……」

と小さな声で彼女は言った。


「拓人が、そう言ってほしいんじゃないかって思ったから」


「……」


僕は無意識に自分のシャツの胸元をつかんだ。

なぜか、そこがチクリと痛んだ気がしたから。