拍子抜けしている僕の耳に、マユミのいらだった声が飛び込んだ。


「ちょっとお、コバくん!女の子くどいてないで手伝ってよ!」


見るといつの間にかマユミは僕の部屋に入り、ミドリの荷物をまとめていた。


「ああ、悪い悪い」

「ほんと女ったらしなんだから」


コバはペロッと舌を出すと、爆睡しているミドリを軽々持ち上げた。


その様子を心配そうに見つめながら、くぐもった低い声でマユミが言う。


「店長、色々と迷惑かけてごめんね。
今日は私んちで寝かすから」


「ああ、うん。よろしく」


「彼女……普段はこんなに酔いつぶれるまで飲む子じゃないんだけど……」


「心配?」


「そりゃあ、友達ですから」



弱々しい微笑を残して、駐車場の方にマユミは帰っていった。

ミドリをおぶったコバがそのあとを追う。



彼らのうしろ姿が闇に消えたのを確認すると、

僕は玄関の鍵をしめて自分の部屋に戻った。