「あなた、変わってるね」
「そうでもないよ」
「ううん、変な人。
見た目は怖そうなのに、話してみるとちょっと抜けてるし」
そう話す彼女の表情には、明らかに好奇心が宿っていた。
「ねえ、名前は?」
「成瀬」
「ナルセ、何?」
「成瀬、拓人」
ふうん、と彼女は鼻で返事して、それから小さく咳ばらいした。
「私は桜子。高校三年生」
「サクラコって、長い名前だなあ」
「そうでしょ?だから、桜でいいよ」
「いや、桜子の方がいい」
「そう?」
「うん。なんか不似合いで、いい」
思わず不似合いと口にしてしまったけれど、
たしかに桜子という名前のもつ日本的な響きは、
彼女の外見には違和感があった。
「似合わないってよく言われるの」
そう言ってすくめた彼女の肩ははかなげで、
肌は驚くほど白かった。
髪も肌もすべての色素がうすく、
日本人のもつそれとは、明らかに違った。