「それは、なる」
 なるのだ、それはすごく。
 自分よりもさらに母によく似た兄は、男の癖にそこいらの女よりずっときれいだ。
 
 その外見と王太子という地位とで女性にもてる。もてまくる。

 なのに、当の兄はどんなにきれいな女性にも無関心に見えた。

 救国の魔女メディアというのが、何者かというのもすごく気になるが、あの兄の関心を引いた女性というのがどういう人なのか、すごく気になった。

 それとも、ほんとにただの政略結婚なのか。

「じゃ、お願いね」

 あっさりと母に言われて、はっとシャリアは気づいた。

 はっ、謀られた!
 父も油断がならないが、母もまた油断がならない。
 いつも、いつのまにか、はめられてしまうのだ。

 私が宮廷は嫌いだって知っているのに。
 自分だって、宮廷が嫌いな癖に。
 恨めしげに母を見るが、彼女は気にもとめない。
 鍋の側にかがみこむと料理の下ごしらえを始め出す。

「魔女メディアちゃん、か」

 とりあえず、自分の身辺にこれ以上、風変わりな人が増えて欲しくはないと思うシャリアだったが、あまり期待は出来そうになかった。