「この人の血を半分引いていると思うと、自分が恐ろしい」

「そう言わないの。悪い人ではないのよ」

「そんなの、わかってるわよ。悪い人じゃなくて、人が悪いだけなのよね」

 ほんとうは、すごく頭が良すぎるんじゃないか、とシャリアは思うこともある。

 王の手になる手紙である。敵国の手に渡ることにでもなれば、あまりに恥ずかしすぎる文面に、かえって何かの暗号文かと、必死で解読しようと試みるだろう。

 しかし、実際は真剣にこれだけの内容なのだ。敵は無駄な努力に時間を費やすことになるだろう。そういうことを考えに入れて、やっているのだ、あの父は。

「で、お母様。行くの?」

「もちろんよ」

「でも、日付も何も書いてないよ」

「それなら、心配無用。あなた、行って聞いてきなさい」

「は?」

「私が直接聞きに行くわけにはいかないし、かと言って手紙で尋ねてみても、ろくな返事は返ってきやしないわよ。それに、ロランツの結婚相手って気にならない?」