「ラムルダ様、カリナさんを責めないでください」

 ふいにシャリアが、ずいとラムルダの目の前に進み出る。
 至近距離で、草原の姫君のかわいらしい顔を目にして、彼は思わず身を退いた。
 しかし、潤んだようにきらきらと輝く、春の空の瞳が追いかけてくる。

「私は、私たちは、ほんとうのことを知ることができてよかったと思っています」

「僕もそう思う。メディアの担った運命を知ることができたのは幸いです」

 シャリアの背後から、追い打ちをかけるように王子が言葉を重ねた。
 どうやら、カリナは、ほんとになにもかも話してしまったようだった。

 ラムルダはひとつかぶりを振った。
 こうなった以上はしかたがない。今はカリナを咎め立てするよりも、メディアを助け出すことが先決だった。

「わかりました。あなた方を信じましょう。メディアは、まだこのことを知らない。知ればショックを受けるでしょうから、私にはどうしても言えなかった。しかし、今はあの子を救い出さねば話にならない。メディアはたぶん向こう側です。我々が魔界と呼ぶ場所に連れさらわれた。そう考えるのが自然です。カリナ、君はセルウさんを送ってやってくれ」

「私も行くよ。『忘却の魔法』なんていう、巧妙な心理魔法をかけられる使い手が、関わっているんだ」

「それはだめだ。君には君の役割がある。セルウさんをこんなところに放置しておくわけにもいかないだろう。それに、そうだな。三日たっても私たちが戻らなかったら、かまわずにほころび目を封じて欲しい」

「そんなことをしたら戻れなくなるよ」

「わかっている。が、このままにはしておくわけにもいかないだろう。なにが出てくるかわからないんだ。だいじょうぶ、まずは様子を見て、すぐに見つけられそうになければ、いったん引き返す。連れもある。深入りはしない」

 カリナは心配げなまなざしをラムルダに向け、ひとつため息をついた。