カリナの問いに帰ってきたのは、意外にも明晰で論理的な答えだった。

「忘却の魔法がかけられていたんだよ。ほころび目を感知しても、次の瞬間には忘れてしまう。封の主の内側から、間接的に探らない限りわからなかった。実に巧妙なやり口だ。忘却の魔法の方は解いたから、今ではふつうに感知できるようになったというわけだ」

「いつから、こんな」

「もうずいぶん前から開いていたようだ。かなり安定している。しかし、その時には、セルウさんも結構なダメージを負ったはずだ。彼の能力がもう少し低かったら、結界そのものが壊れていたかもしれない」

 そこで、注意深く二人の会話を聞いていたロランツが口を挟んだ。

「あの方は、セルウ殿は大丈夫なのですか?」

 ロランツ王子の声に混ざる心配の色に、ラムルダはカリナに鋭い視線を向けた。
 この王子が、そうそうに赤の他人を心配するふうを見せるわけがないのだ。
 彼の素性を知っているとしか思えない。

「カリナ、どこまで話した?」

「全部」

「ばかなっ!」


 厳しくにらみつけてくる視線に、カリナはたじろきもせず、肩をすくめただけだった。

「ここまできたら、しかたないでしょ。話さずにすむとでも思った?」

 軽くいなされて、ラムルダは額を押さえ、深々とため息をついた。