いったんことの見極めがつけば、ラムルダの決断は速かった。

「私は、いったん魔法院に戻ります。いろいろと準備したいことがありますから。殿下はどうされますか」

「もちろん、僕も行きます」

 ロランツの明快な答えに、ラムルダは少し困った顔をした。

「殿下にはここでお待ちいただきたい。これには魔法が関わっています。魔法は我らの領域です」

 酷な頼みだとはわかっていた。

 あれだけメディアに惚れ込んでいるこの王子が、おとなしく待っていられるわけがない。今でも、いても立ってもいられない気持ちのはずだ。自分だって似たようなものなだけによくわかる。

 だが、気持ちに共感できるとはいえ、魔法が関わるとなると、王子は足手まといになるだけだ。できれば、ここで待っていて欲しかった。

「あなたは勘違いをしている。メディアは僕の婚約者で、未来のウィルランド王子妃、いずれは王妃となる人だ。その彼女の捜索に、あなたは協力してくれている。とてもありがたく思っていますよ」

 返ってきた答えは、彼が一筋縄ではいかない人物であることを証明していた。

 王子の口調は、特にいきり立つふうもなくごく落ち着いたものであったが、それだけに断固たる意志を感じさせた。

 同行を断ったところで無駄だということ、それならそれで勝手に行動すると、暗に宣言しているのだ。

 引く気は全くないのだろう。
 何よりもその青い瞳に宿る強い光が、それを雄弁に物語っていた。

(しかたないか)

 勝手に行かせるよりも、連れていった方が目の届くぶんだけ、まだ安全だろう。

 が、さらに、彼を困らせる人物がもう一人。