抵抗をあきらめたか、ようやくおとなしくなった腕の中のメディアを、王子は見下ろしながら思う。
 
 最初に出会ったときから、ロランツは彼女に心引かれた。

 意志の強そうな緑の瞳、燃えるような赤い髪、抱きしめれば腕の中にすっぽりとおさまってしまう小さな体、くるくる変わる表情。
 
単に外見の問題だけではない。小気味いいほどに遠慮のない物言い、自身の力に対する強い自信と誇り、それでいて、時折見せる不器用な優しさ、彼女を知れば知るほど、愛しさは募っていった。

 彼女にとって、自分の最初の印象は最悪だったことは、容易に想像がつく。

 だからこそ、王子妃の座など要求したのだろうに、いまではずいぶんと心を許してくれるようになったと思う。笑顔も見せてくれるようになったし、抱きしめてキスをした後、容赦ない平手打ちが襲ってくる回数も減った。