と告げ電話を切った。
鈴はもやもやした複雑な思いだった。侑の行動がおかしい。そう感じた。

鈴は急いでデスクの書類を片付け鍵を閉めた。事務所を閉めセキュリティーもかけビルの外に行くと侑が待っていた。
「早いね~。」
暦は春。少し肌寒い。まだ雪も残っていた。歩くとシャリシャリと音を立てビルの間から冷たい風も吹く。
「一緒に帰ろうなんてどうしたの?」
歩幅を合わせて歩いてくれる侑。お互いの肩の距離がいつもより近い気がした。
「何となく。お前の顔を見たかった。」
真面目に答える侑に頬を赤く染めた。
(照れるっつーの)
「お前さぁ、銘と付き合って幸せ?」
「え?」
急な質問に心臓の鼓動が早まる。
「…結婚すんの?」
鈴の左手の薬指に目をやる。
「指輪はしてるけど…結婚するつもりはないよ。」
意外な返事だった。
「だってまだ22歳だし~。自分にお金かけたいもん!」
若い女の子らしい考えだ。しかし侑は気付いていた。
「本当にそれだけ?あいつにウンザリしてるんじゃねぇの?」
図星だった。銘は鈴を運命の人だと思っている。好きで好きでたまらない。しかし鈴は心のどこかでいつか終わる予感がしていた。