缶コーヒーを飲み干しゴミ箱へ投げた。カンっと高い音を鳴らし見事命中。
「で?石井に何て言い返した?」
宏は興味津々。親友の恋バナに目が輝いている。
「それはできねぇな。第一、お前より俺の方が鈴を知っている。まぁそのうち分かるよ。あいつは俺を選ぶ。って言った。」
婚約者の銘に堂々たる宣戦布告。
「かっこいい~!それいつの話し?!」
「二週間くらい前かな。」
「へぇ~。それで二人が一緒に通勤している所を毎日見てるわけだ。」
銘が見ているとなれば侑は更に鈴に接近する。でも慎重に。自分のせいで鈴が傷付かないように…。好きな女の子の涙が一番辛い。特に片思いには心が痛む。
「さぁ~仕事。朝礼すっぞ~。」


「あ~今日も忙しいんだろうなぁ…。」
自分のデスクに座りパソコンを立ち上げる。鈴は総務部だった。しかし職業内容は責任を問われる仕事ばかり。電話の応対はもちろん営業マンのフォロー、物流、顧客管理などなど。毎日時間が足りない程だ。
「発送がいっぱい…。」
ため息混じりにメールをチェックする。
「お。侑だ」
代理店なので鈴とは毎日やり取りする。
「名簿できた?…あったっけ…。」
書類とファイルで埋まっているデスクを