さ。」
「侑は長期戦が得意だもんなぁ。どーせまた作戦だろう？」
親友の宏がデスクに寄りかかり皮肉っぽく言い放った。
「あ。バレた？」
「でも佐倉次長。石井主任も二人が一緒に通勤してる所見てますよね？何も言われないんですか？」
池田が割って入った。侑の顔色を伺ったが変わりはない。短い沈黙ののちニヒルな表情で
「へぇ～。あいつ見てたんだぁ。こりゃあ俺の勝ちだな。」と外を眺め呟いた。

「あ、銘君おはようございます。」
こちらは鈴の会社。侑の会社はすぐ裏のビルに入っている。
「おはよう、鈴。」
にこっと笑うもやや引きつっている。
（今日もまたあいつと…。）
銘は複雑な心境だった。鈴が笑顔でいられるなら、と思い束縛はしなかった。侑と仲がいいのも知っていた。ただ、今朝の二人の様子には我慢も限界だった。毎日コソコソと後ろから見るなんてしたくなかった。
（あいつが俺にあんなことを言わなければ…。）


「マジで？！侑、石井に斉藤さんに近づくなって言われたの？！」
宏の声がオフィスに響く。
「ああ。コンビニの前で待ち伏せされてね。」
「へぇ～。そうとう焼いてるねぇ。」
「まぁ、こんなのが横から入ってきたら気分悪いべ～。」