キズナの声が聞こえない達也は、何が起こったのか全くわからず、ただベッドの上で縮こまっている。
達也の部屋の玄関まで来たとき、優雅が達也を振り返って言った。
「……達也。一つだけ教えてやるよ。俺は引き抜きの話を受ける気はなかった。お前達から離れる気なんて全くなかったんだ。俺の夢は、四人でトップの舞台に上がることだったから」
優雅はそう言い残すと、キズナと共に扉を抜け、出て行ってしまった。
部屋に一人取り残された達也は震えていた。後悔と懺悔の涙を大量に流しながら。
優雅とキズナが達也の家から少し離れた小道で最後の挨拶を交わしていた時には、もうすっかり日は昇り、輝く太陽が二人を照らしていた。
「世話になったな」
優雅はぶっきらぼうにそう言ったが、完全な照れ隠しだとキズナにわかっていた。
「あなたほど手のかかる霊は、今まで見たことなかったわ」
キズナは嫌みっぽくそう言い、微笑んだ。
「悪かったな!……でも、さんきゅ」
優雅はそう言って再び照れると、逃げるように小さな光の塊に変化した。素直に感情を伝えることが、どうも苦手らしい。
キズナはふっと笑うと、肩の上のツキに合図した。
ツキは元気よく飛び立ち、優雅の魂と共に消えていった。
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「さて……ツキが戻るまで、ここら辺で一休みしようかな」
キズナが伸びをしながら小道を歩いていると、突然後ろから声をかけられて足を止めた。
懐かしい、そして恐ろしい声に。
「……絆<キズナ>……?」