傍らで、ずっとキズナの服の中に隠れていたツキが、顔を突き出して尋ねた。


「なんで達也に優雅の声が聞こえるの!? さっきまで優雅の声、聞こえてなかったのに」


「多分……心が繋がったから」


キズナが優雅の怒りを鎮める方法を必死に考えながら答えた。


「ツキ、弘樹のことを覚えてるでしょう?バイク事故で死んだ……」


キズナの問いにツキが頷く。


「弘樹の声は彼の妻、綾華には一度も届かなかった。綾華の出産の時までは。あの時、極限状態だった綾華が弘樹の魂を求める気持ちと、綾華を助けたい弘樹の気持ち……二つの気持ちの強さが、二人の心を繋げた」


キズナは鎌を固く握りしめ、焦りを含めた目で優雅を見つめながら話し続けた。


「今も同じ。優雅は自分を殺した人間を憎み、達也は自分が殺した人間を恐れていた。そして、優雅は犯人が達也だと知り、達也はこの怪奇現象が優雅の仕業だと考えた。互いに向け合う怨みと恐れ……この二つが二人を結びつけた」


「キズナ!優雅が達也を殺しちゃう!!」


ツキが優雅を指差して叫んだ。


優雅は達也の首に手を伸ばしている。優雅の手と達也の首の距離が数センチとなったとき、突然に達也の体が浮き上がり、苦しみだした。


「すぐには逝かせない。俺の苦しみを少しでも味わわせてやる」


優雅は、達也の首から少し離れたところに手を広げ、怨みの念で達也を苦しめながら冷たく言った。


達也は、まるで見えない手で首を絞められているかのように、両手で首を押さえ、もがいている。


その時、突然キズナの鎌がガタガタと震えだした。斬るべき魂を見つけ、興奮しているように。


それを見たキズナが、大鎌を睨みながら叫んだ。


「絶対に斬らせないわよ! もうこれ以上、消えていく魂は見たくない!!」


一方、達也は気管を圧迫されて顔が少しずつ赤くなり、そしてさらに血の気が引いて紫に変わった。


「た……すけ……」


「じゃあな」


達也の今にも消えそうな声を打ち消して、優雅が言い放った。