キズナと優雅の目が、同時にツキの方に飛ぶ。


「誰だったか分かった?」


キズナが尋ねるが、ツキはふるふると首を横に振った。


「分かんなかった。感じたの、一瞬だけだったから。でも、確かに一人だけ"悲しみ"の感情がなかったの」


考え込むように顔をしかめているツキを見て、優雅が怪訝な目で問い掛ける。


「おい、なんでそんなこと分かるんだよ?」


「ツキはね、『感情』に敏感なの。だから彷徨う霊を探す時、この世への未練が強ければ強いほどツキは早く見つけられる」


キズナはそう答えた後、鋭く目を光らせながら続ける。


「あの中に、あなたを殺した人物がいる事は間違いないみたいね」


優雅は信じがたい思いだった。何年も一緒にいたあの仲間達の中に犯人がいるなんて。


しかし、真実を知りたい。その強い思いが優雅を動かした。真実を知るには……調べるしかない。


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「なんっにも出てこないわね」


キズナが空から四人の乗ったワゴン車を追いかけながら、優雅に向かって呟いた。


あれから数日……あの四人追いかけ、何か不審な動きはないかと見張ったが、一向に手ががりは掴めなかったのだ。


「優雅、本当に何も心当たりないの?」


キズナの肩に捕まっていたツキが問いかけるが、優雅はただ黙っていた。



――心当たり……あれから数日考えた。よく考えれば、無いとは言いきれない。


俺が死ぬ前日に歌詞のことで揉めていた。廉が掴みかかってきたっけ。


それに引き抜きの話が来ていた。RISEを抜けて、俺単独で活動しないかと。それで岩見さんとも言い争ったな。


達也ともしばらく口をきいていなかった。死ぬ数日前、達也の大事なギターを誤って壊してしまったから。


碧が、本当は歌を歌いたがっているという話を廉から聞いていた。もしかしたら、俺が邪魔だったのかもしれない。



そんな考えを巡らしている間に、四人の乗った車が、ある建物の前に停車した。大きいホールだ。


四人の後に続いて中に入った優雅は絶句した。