「どうして?」
癒芽が首を傾げたが、キズナは悲しげに微笑み、手短に答えただけだった。
「死神は……罪人だから」
「……つみびと?」
癒芽はそこまで言うと、出しかけた問いを飲み込んだ。おそらく、「何で罪人なの?」という内容の問いだろう。
しかし、キズナの辛そうな顔が、その問いを引っ込めさせたのだ。
癒芽は、飲み込んだ問いを別の言葉に変えて発した。
「……死神さん! 蓮華草のもう一つの花言葉、教えてあげよっか!!」
いきなりの癒芽の笑顔に、キズナは不意をつかれたように目を見開いた。
「『苦しみが和らぐ』だよ」
癒芽が声を張り上げていった。
「死神さん、いっつもどこかしんどそう。だから辛くなったら、あの野原の蓮華草を見に来て! きっと蓮華草が苦しみを和らげてくれる。それで、いつかきっと苦しみがなくなる日が来るよ!!」
キズナはふっと笑い、癒芽の頭をなでた。
「ありがとう」
癒芽はもう一度とびきりの笑顔を見せると、癒芽の横をパタパタ飛んでいたツキの尻尾をむんずと掴んで言った。
「ツキちゃん、お空つれてって!!」
尻尾を嫌と言うほど引っ張られたツキが悪態をついたときには、すでに癒芽の体は消えていた。
さっきまで癒芽が立っていたところには小さな光の塊が浮いている。
「さぁ、ツキ、お願いね」
少し不機嫌そうなツキは、丸い月が浮いている夜の空を見上げた。
そして、先程引っ張られた尻尾で天への道を探りながら、小さい光と共に消えていった。
「私もいつか……救われるだろうか……」
キズナは静かに呟くと、二人の親子に背を向け、夜の闇の中に姿を消した。