それからしばらく、二人は無言のまま歩き続けた。しかし、商店街を抜けた先に大きなコンビニが見えた時、幸弘が弾んだ声を上げる。


「あ! コンビニ寄っていい!? 俺、炭酸飲みたい!」


蒼依がその問いに頷いた時には、幸弘は既にコンビニに向かって走っていた。


「ちょ……幸弘! 速いよー!」


蒼依は、返事を待たずに走り出した幸弘を慌てて追い掛けていった。


コンビニの中に入ると、幸弘は陳列された商品の中から欲しいものを選んでいた。蒼依はしかめ面で幸弘に近付き、幸弘の背中をパシッと叩く。


「幸弘! 置いていかないでよ!」


「ごめん、ごめん」


怒る蒼依に、幸弘がへらへら笑いながら謝った。


蒼依は呆れのため息をつき、飲み物を選んでいる幸弘の後ろ姿に向かって呟く。


「幸弘ってマイペースだよね」


「おぅ、よく言われるー。……あ、ついでに菓子パンももらって行こーっと」


言ったそばから更にマイペースぶりを発揮し、菓子パン売場へと駆けていく。蒼依はそんな幸弘についていけず、一人でコンビニ内を見て回ることにした。


そんな中、ふと足元に目をやると……何か赤い水滴のようなものがいくつか落ちていた。それは店の奥へ続いているようだ。


不思議に思った蒼依がその水滴を辿っていくと、コンビニの事務所へ通じるの扉に到達した。好奇心を刺激された蒼依は、こっそりと事務所の中を覗く。


「ゆ……幸弘! こっち来て!」


蒼依が切羽詰まった声が店内に響いた。それに気付いた幸弘が、慌てて蒼依の元へ駆け付ける。


「どうした?」


幸弘が、事務所の中で茫然と立ち尽くしている蒼依の背中に問い掛けた。そして、蒼依の後ろから蒼依の視線の先を追いかけてゆくと……


そこには、十五歳程度の少女が全身傷だらけで床に倒れていた。幸弘が急いで駆け寄り、少女の容態を確認する。


「……息はあるみたいやな」


幸弘はそう呟くと、その少女の体を抱き上げて蒼依の方を振り返った。


「とりあえず、こいつ連れて一旦帰るぞ。隼人達もいずれマンション戻ってくるやろし」


蒼依は幸弘の判断に同意し、急いでマンションへと引き返していった。