「待てや、蒼依! ……もー、隼人言い過ぎ!」
幸弘は戒めるように隼人に目を向けると、急いで蒼依の後を追い掛けた。
蒼依と幸弘が部屋からいなくなった後、小さくため息をつく隼人の耳に、嫌に冷静な声が聞こえた。
「存続派が本気になった以上、僕達も殺す気でかからなきゃいけない。けど、蒼依に松下恭を殺させたくない。……そんなとこかな?」
隼人が振り返ると、今しがた幸弘が出ていったリビングの扉のところに、にこやかな顔をした大地が立っていた。
「起きてたのか?」
むくれるように顔をしかめながら、隼人が大地に問い掛けた。しかし、大地は隼人の表情を特に気にする様子もなく、当たり前のように答える。
「あれだけ大声で話してたら嫌でも起きるよ。それにしても、隼人……素直じゃないね。心配ならそう言えばいいのに」
「うるせぇんだよ。チビ」
隼人は素っ気なくそう言うと、大地の横を通り過ぎて自室へと去っていってしまった。
次の日の朝、幸弘から集合がかかり、蒼依がリビングに向かうと既に他の三人が集まっていた。
部屋に入った時、隼人と一瞬目が合ったが……思わず逸らしてしまった。昨日怒鳴ってしまった手前、どう接したらいいのかわからない。
あまりにも露骨に目を逸らしてしまったため、隼人の逆鱗に触れてしまったようだ。かなり苛立っている様子の隼人から、何回か舌打ちが聞こえた。
そんな蒼依と隼人を見兼ね、間に漂う険悪なムードを壊すように幸弘が声を上げた。
「さぁ、今日も張り切って仲間探しに行くでー! 今日は二手に別れていこ! その方が効率いいし。……蒼依、一緒にいこや」
昨晩のことを気遣ってくれているのか、幸弘が笑顔で誘ってくれた。
確かに、二手に別れた方が精神的にも助かる。隼人と行動するのは、かなり気まずいものがあるからだ。
「うん」
蒼依が少し安心したように微笑み返すと、幸弘は大地と隼人に向かって指示を出す。
「ほな、また夕方にこのマンションで落ち合おや!」
それに隼人達も頷き、四人は二手に別れてマンションを後にした。