無事にマンションに到着し、気を張っていた三人の表情に安堵の色が見えた。
リビングには誰もいない。大地は……恐らく自室で眠っているのだろう。
幸弘はリビングの机に狙撃銃を置くと、椅子に腰掛けて話を切り出した。
「蒼依、詳しく話してもらおか。なんで存続派の統領と会っとった?」
幸弘の質問に、蒼依は包み隠さず全てを話した。一週間前にたまたま恭を見つけたこと、存続派への誘いのこと、生じた迷いに苛まれて悩み続けたこと。
蒼依が話している間、隼人は難しい顔で壁にもたれ掛かり、幸弘は椅子に腰掛けたまま聞き入っていた。
そして、蒼依が全貌を話し終えると、幸弘が静かに口を開く。
「そういうことやったんか。まぁ、誘ってきた相手が相手やし……悩む気持ちはわからんでもないわ」
幸弘が少し複雑な顔で頷いた。蒼依は申し訳なさそうに視線を落としていたが、やがて幸弘に目を向け、抱えていた疑問を投げかけた。
「……二人はどうしてあの場所にいたの?」
部屋を出るときは音を立てないように注意したし、なによりそんな夜中に皆が起きていたとは思えない。
何故、二人があの場にいたのか。蒼依には、それが不思議で仕方なかった。
「あー、蒼依の様子がおかしいから、隼人と俺が交代で見張ってたんや。で、蒼依が出ていった事に気付いて、すぐに追いかけてん」
幸弘が隼人に目配せしながら言った。その言葉に蒼依の顔が一瞬で引き攣る。
「……今晩に私が恭と会ってたところ、ずっと見てたの? 最初から?」
恭とのキスシーンを思いだし、蒼依の心臓がこの上なく跳ね上がった。
あんなところを見られたら、恥ずかしくて生きていけない。絶対に知られたくなかった……特に、隼人には。
そう思ったとき、はたと思考が停止した。
――あれ?なんで隼人に知られたくないんだろ?別に隼人には関係ないのに。
首を傾げながら自問していると、かなり不機嫌な様子の隼人から棘のある言葉が飛んできた。
「覗き見なんて悪趣味な事するかよ。俺らが追い付いたのは、お前らが仲良く抱き合ってる時だ」
……ということは、あのキスは見られてないはず。蒼依は心底安心した。