四人は幸弘が作った料理を平らげ、明日の行動について論議した後、皆がそれぞれの自室に戻っていった。


……が、蒼依だけは自室に戻らずにリビングのソファーに座り込んでいる。


時計を見ると、既に十二時を越えていた。恭との約束の時間まであと一時間。時計の針は容赦なく時間を刻んでいく。


それとシンクロして胸の鼓動が段々と速くなっていくのを感じていた、その時……突如リビングの扉が開く音が聞こえた。


「あれ? 蒼依、まだ起きてたの?」


その声に蒼依が顔を上げると、驚いた顔の大地が立っていた。


「あ、うん。ちょっと眠れなくて。大地は?」


「僕はお茶飲みに来たの。蒼依も飲む?」


「ううん、大丈夫。ありがと」


蒼依は曖昧な笑みを向けた後、ゆっくりソファーに座り直した。すると、茶を飲み干した大地が不思議そうな顔で蒼依の顔を覗き込んできた。


「寝ないの?」


「うーん……もう少ししたら寝るよ」


蒼依の返答に、大地は勘繰るように「ふぅん」と呟いた後、静かに蒼依の隣に座り込んだ。


「何かあったなら話してほしいな。僕、Separate Worldに住んでる期間長いし、色々わかってるつもりだから」


大地はピラっと一枚の紙をちらつかせながら微笑んだ。それは、Separate Worldに来たときに白い鳥が運んでくる管理局からの手紙だった。


蒼依が受け取ったものとほとんど違いはないが…蒼依の手紙では『17人目の住人』と書かれていた場所に、『3人目の住人』という文字が記されている。


それを見た蒼依は、少し驚いたように目を見開きながら尋ねた。


「大地って、どれぐらいの間ここにいるの?」


「もう一ヶ月半になるかな。幸弘も最近来たばかりらしいから、Separate Worldに関しては僕の方が先輩。だから……何でも話してよ」


大地は妙に勘が鋭い。洞察力があると言った方が正しいのだろうか。大地には、全てを見透かされている気がした。


それに、落ち着きのある性格のせいか、不思議な安心感を与えてくれる。Separate Worldの異常な環境が、まだ十二歳の大地をこんなにも大人びた性格にしてしまったのだろうか。