頭を抱える蒼依の耳に、突然幸弘の部屋から大声が聞こえた。
「蒼依ー、ちょっと俺の部屋おいで!」
開いた扉の向こうからの呼びかけに首を傾げ、蒼依は幸弘の部屋へと顔を覗かせる。
「なぁに?」
「こっちこっち!」
幸弘は部屋の中央に立ち、蒼依を手招きしている。
幸弘の部屋は、いかにも男の部屋という感じで、男物の雑誌や服が乱雑に散らばっていた。ただ、普通の部屋と違うのは……何やら正体不明の部品や機械類が転がっている点。
それらを跨ぎながら部屋に入ると、幸弘がにんまりと笑って蒼依にある物を手渡した。
「はいよ!」
「……へ?」
「蒼依の分の拳銃! 改造終わったから返すわ! これで、あの植木鉢目掛けて試し撃ちしてみぃ」
幸弘はそう言いながら、窓側を指差した。その先には、隣の家のベランダに綺麗に並べられている植木鉢が数個見える。
「うん……」
――見た目はあんまり変わってないんだけど……改造したら、そんなに違うものなのかな?
そんな考えをちらつかせつつも、蒼依は幸弘の指示通りに植木鉢に狙いを定めて銃弾を放った。
パン!!
ある程度の衝撃はあるものの、以前のように腕が跳ね上がるということは無く、標的に当てやすい。威力も格段に上がっており、弾が当たると同時に一つの植木鉢が激しい音を立てて砕けた。
「……軽い」
思わず呟く蒼依に、幸弘が満足そうに数回頷いた。
「そうやろ!? さっすが俺やわー! 天才やね!」
改造能力を自画自賛する幸弘を放置して、蒼依は拳銃をまじまじと観察していた。
――すごい。もっと練習すれば動いてる物にも当てられるかも。もう一発、撃ってみたいな。
そう思いながら、標的となるものはないかと室内を見渡していると……
「あれ? ……カメラだ! 大きい!」
蒼依の視線の先には、大きなカメラが置いてあった。爆発的に普及されているデジタルカメラとは違い、プロの写真家が持つような本格的な物だ。
そのカメラはかなり丁重に扱われているようで、その周りには埃一つ無い。蒼依の目を引いたのも、それが原因だった。