神社の一件から一週間……隼人達と共に他の住人達を探す中で、蒼依は結局結論を出せないまま恭との約束の日を迎えてしまった。迷いは、日が経つごとに膨らんでゆく。
そんな蒼依の異変に他の三人が気付かないわけがない。その日の昼食の時に、たまり兼ねた幸弘が遂に尋ねた。
「蒼依ー、どうしたん? 最近ずっと塞ぎ込んでるやん。便秘か?」
「幸弘……食事中にその言葉はないでしょ」
大地が呆れ顔で呟いた後、蒼依に視線を戻しながら言葉を続けた。
「でも、本当に元気ないよね。ずっと上の空だし。何かあったの?」
心配そうに蒼依の顔をのぞき込む大地に、蒼依が急いで首を振った。
「えっ……。別に、何でもないよ」
恭と会っていたなんて……ましてや、元の世界に帰ることへの迷いが出ているなんて言える訳が無い。
彼等は元の世界への帰還を真剣に考えている。こんな中途半端な思いを話すわけにはいかないのだ。
自然と視線を落とす蒼依を見兼ね、幸弘が声を張り上げた。
「なぁ、今日は仲間探し休憩しよか!」
「だ、大丈夫だよ! 急がなきゃ存続派と他の子供達が接触しちゃうし」
慌てて言う蒼依の横で、昼食を食べ終えた隼人が立ち上がりながら口を開く。
「それなら、俺だけで行ってくる」
「僕も行くよ」
隼人に次いで、大地が微笑みながら席を立った。おろおろしている蒼依をよそに、幸弘が椅子の背にもたれながら明るい声で話をまとめた。
「ほな、俺と蒼依は家で待機! 隼人と大地で行ってきてー!」
その言葉に頷き、隼人と大地が玄関へと歩み出した。……が、隼人が思い出したように足を止め、幸弘に向かって右手を差し出した。
「幸弘、預けていた拳銃を返せ」
「あ、そうや! 忘れとった」
幸弘は自分の額をペチッと叩き、急いで自室に走っていった。そして、数十秒と経たないうちに戻り、二丁の拳銃を手渡しながら笑顔を向ける。
「ほい! 無駄な衝撃は抑えたし、ブレも減るはずや。ついでに弾も改造して威力も上げといたよ!」