「Separate Worldから帰りたくない奴らや。元の世界でよほどの事があったんやろ。で、そんな奴らを束ね出したんが、松下恭っちゅう男や。……そうやな?」


幸弘が隼人に向かって確認するように尋ねた。それに対し、隼人は少し目を逸らして小さく頷く。その直後、幸弘がはたと思い出したように隼人に問い掛けた。


「そういや、今朝に盗聴機から聞き取ったんやけど……Separate World 管理局を探すって言ってたな。何か手掛かりあったか?」


「いや、まだだ。探し始めた矢先に松下が裏切ったからな」


隼人は素っ気なく首を横に振った。それを聞いた幸弘は、顎に手をあてて少し考えた後に軽く頷いて言葉を発する。


「……そうか。じゃあ、とりあえず管理局探しは延期や」


「どうして?」


目を丸くしながら尋ねる蒼依に、幸弘が茶をすすりながら説明をした。


「まずは存続派を何とかしなあかん。あいつら、Separate Worldを守るためやったら容赦なく殺してくるやろし。……現に隼人が殺されかけとったしな」


幸弘が隼人にチラっと目をやった後、さらに話し続ける。


「ええか?存続派は今、松下恭を中心に仲間を集めとる。人数で負けたら現実世界への帰還は至難の業や。これ以上あいつらに仲間が増えるのは確実にマズイ」


「今は存続派と他の住人の接触を防ぐことが最優先。……そういう事だよね、幸弘?」


幸弘の言葉を受け継ぎ、大地がおおらかに言った。その言葉に幸弘が大きく頷く。


「そうや。その上で俺らと同じ考えを持つ奴を探して仲間を増やす。それが今やるべきことや」


幸弘はそう話した直後、難しそうに唸りながら小さく呟いた。


「問題は存続派の統領やなぁ……。蒼依の幼なじみなんやろ?めちゃめちゃ戦いづらいやん」


「うん。でも……あんなの恭じゃない。私が知ってる恭はもっと優しくて明るくて。あんな残酷なこと出来るような人じゃないんだ」


泣きそうな声で話す蒼依の横で、隼人が目を逸らしながら静かに言った。


「状況が変われば人も変わる。あいつが本気でSeparate Worldを守るというなら、俺もそれなりに出方を変える」